恋は買収できません!~厄介な幼馴染CEOの強引すぎる溺愛~

㉑

あっという間に月曜日がやってきた。お昼休みでがらんとしたオフィスで、私は原田さんに頭を下げた。

「ごめんなさい。原田さんの気持ちは受け取れません」
「……神崎のことが好きなんだね」
「そうみたいです」

頭を上げて、ぽつぽつと気持ちを言葉にしていく。

「どれだけ拒否しても追いかけてきて、まったく理解できないのに。大っ嫌いだったはずなのに、いつの間にか好きになっちゃってたんです」
「そっか。苦労しそうだね」

原田さんにつられて、私も小さく笑った。

「それで、まだあいつには伝えないの?」
「はい。これまで散々振り回されてきたので」
「あはは、なるほど。お返しってわけか」

ふたりで笑い合っていると――

「おい」

いきなり背後から声をかけられ、私は「ぎゃっ!」と女子らしからぬ声を上げた。

「そ、蒼真! いつからそこにいたわけ!?」
「原田と何を楽しそうに話してたんだ」

すると原田さんは蒼真を試すように言った。

「今日のランチ、一緒に行かないかって誘ってたんだ」
「そうか。なら俺も行く」
「あれ、僕を置いていこうとはしないんだな」

頷いた蒼真は自信ありげに胸の前で腕を組む。

「考えてみれば単純な話だ。原田を含め、他の選択肢を千佳から奪う必要なんかない。そのどれよりも俺を選びたいと思わせればいいだけのことだからな」

すっかりおとなしくなったのかと思ったら、結局こいつはこうなのだ。

「相変わらず自信満々ね、蒼真」
「当然だ、こういうのは得意だからな。要はビジネスと同じだ。どこよりも好条件で、魅力的な提案をする。そうしてお前を振り向かせてみせる」
「言っておくけど、私を会社へ引き抜くことはできても、心までは買収はできませんからね」
「わかってる。そういうのはもうやめだ。お前に選ばれなきゃ意味がないからな」

蒼真は自信たっぷりに口角を上げた。

「お前が自分から俺を求めるようになるまで、最高の提案を続けるだけだ」

その笑顔がやけに眩しく見えてしまって、私は本当にどうかしている。
この世界には、こいつより優しくて穏やかで、付き合いやすい男がいる。だけど私はわざわざ、この男を選ぶのだ。
誰よりも厄介で面倒で傲慢だけど、誰よりも一途に私を愛する、最悪で最高のこの男を。

(でも、簡単には言ってやらないんだから)

好きだなんて、まだしばらくは。
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