恋は買収できません!~厄介な幼馴染CEOの強引すぎる溺愛~

⑦

私と原田さんは、オフィスから徒歩5分ほど離れたビルの地下にある、海鮮丼のお店へ入った。混んだ店内のカウンター席に並んで座り、注文を済ませると、原田さんがおしぼりで手を拭きながら尋ねた。

「水野さんと神崎は、昔からあんな感じなんですか?」
「ええ、まあ……今は社長なんて権力を手に入れた分、傍若無人ぶりが悪化してますけど」
「あはは。でも今は同棲してるんですよね。嫌いだったらさすがに一緒に住むまではしないでしょう?」
「私の意志じゃありません! グローノエッジに来たのだって、ほぼ無理やりですから」
(そりゃ、傾きかけた会社から助けようとしてくれたのは嬉しいけど)

実際あのあと同僚から連絡があり、会社では事業縮小に伴う希望退職者の募集が始まったと聞いた。傾きかけているという蒼真の話は本当だったのだ。とはいえ、やり方というものがある。

「確かに強引だからな、あいつ。僕も、今の水野さんみたいに神崎に引き抜かれたんですよ。大学時代、ひとつ下のあいつが同じサークルに入ってきて知り合ったんですけど、卒業後、何年も連絡を取っていなかったのにいきなり連絡してきて『会社を作ったから、俺のところへ来てくれ』ですから」
「あー、蒼真らしいですね。いかにも蒼真」

先輩に対してもこうなら、私にあの態度なのは当然というわけである。

(というか……)
「原田さん、蒼真の先輩なら私より年上ですよね。私には敬語を使わなくていいですよ、全然タメ口で。その方がこっちも気楽ですから」
「そう? わかったよ、ありがとう」

蒼真に振り回されてきた者同士という奇妙な親近感を覚えていると、原田さんが何気なく言った。

「じゃあ、神崎のことは好きじゃないんだ」
「はい。あんな男、恋愛対象として絶っ対にありえません」
「そうなんだね。あの強引な性格さえ直っていれば、また違った結果になったかもしれないのにな」
「蒼真が変わるなんてありえないと思います」

思わずため息をついた時、丼が運ばれてきた。私が頼んだ脂ののったサーモン丼も、原田さんのネギトロ丼もボリュームたっぷりだ。

「ランチタイム限定とはいえ、これで1000円でおつりがくるなんて信じられない……! いいお店を教えてくださってありがとうございます!」
「どういたしまして」

原田さんが渡してくれた割り箸を割り、大きな切り身にかぶりつく。原田さんはいい人だし、サーモンは美味しいし。午後からも頑張れそうだ。
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