恋は買収できません!~厄介な幼馴染CEOの強引すぎる溺愛~

⑧

ランチの後オフィスへ戻ると、原田さんは改めてプロジェクトの説明を始めた。

「僕たちは、社長肝入りのプロジェクトを担当しているんだ。水野さんに男のOJT担当なんて絶対につけたくなさそうな神崎が僕を指名したくらい、必ず成功させたいというわけ」
「そ、そんな大事なプロジェクトに、私みたいなのが参加しても大丈夫なんでしょうか」
「神崎は水野さんのことを随分買っているみたいだね」
「ええ……全然心当たりないですよ。前職でも、ごくごく普通の総務だったので」
「そうなの? とりあえず簡単に説明するね」

グローノエッジは、企業ごとのシステム開発やDX支援を手がけて急成長してきた会社だ。しかし受託開発中心の現在のやり方では、会社をさらに成長させるには限界がある。
そこで蒼真は、グローノエッジ独自の業務支援サービスを開発し、多くの企業へ月額制で提供する新事業を立ち上げたという。

「対象は、専任のIT担当者がいない中小企業。複雑な初期設定や専門知識がなくても導入できて、社員が総務関係で困った時、必要な情報や手続きへ簡単に辿り着ける社内ポータルの開発を目指しているんだ」
「それはありがたいですね。私も難しいことはさっぱりですし」
「はは、まさにそういう人たちにも使ってもらえるようなものを目指してるんだよ。このサービスが普及すれば、大きな市場シェアが獲得できて、継続的な収益を得られる可能性がある。会社の将来を大きく変えることになるから、神崎自身がプロジェクト全体の指揮を執っているというわけなんだ」

原田さんはパソコンを操作し、開発中のソフトを立ち上げた。表示されたトップ画面の中央には、困り事を自由入力できる検索ボックスがある。

「今はコンペに向けて試作版を開発していて、ひとまず必要な申請機能の実装はできているんだ。個々の機能は問題なく動くんだけど、利用者目線での検証が追いついていなくて。うちの総務はシステムに慣れてしまっているから、対象企業に近い環境で働いていた水野さんに、初めて使う人の目線で試してほしい」
「なるほど。だから私が」

一瞬、蒼真の顔が頭に浮かんだ。てっきり私を自分のそばへ置くために、無理やりプロジェクトへ押し込んだのだと思っていたけれど、総務経験のある人間を参加させること自体にはきちんと理由があるらしい。
とはいえ。

「じゃあ、総務経験者なら誰でもよかったわけですね。私を引き抜いたのって、完全に私情じゃないですか」
「うーん……100%私情ってわけじゃない気もするけどね」
「そうなんですか?」
「ああ、ごめん。なんとなくそう思っただけだから、忘れて」

原田さんは操作方法をまとめたマニュアルを開き、私のデスクに置いた。それから私の席まで椅子を動かしてくると、実際に操作しながら試作版の基本的な使い方をひとつずつ教えてくれる。
一通りの説明を終えると、今度は私にマウスを譲った。

「じゃあ、自由に使ってみて。わかりにくいところや気になったことがあったら、どんな小さなことでも言ってね」
「わかりました」
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