家ナシ女子は能面社長に拾われる~今日もいい日になりますように!~
 だって、ひと切れで300円なんてするの、自分には買えないよぅ。
 つい、ビンボー人の習性で、安いものを手にしてしまうのだ。

「あっ、あの」
「それも必要経費のうちだろう。使うべき金は使え」
「で、でも」
「高ければいいというものじゃないのも分かってる。が、高ければ高いなりの質である可能性が上がる。どうせ予算を残すんだ、たまには使いきってみろ。それも勉強のうちだぞ」

 うぐ。

 最初は様子見として一週間分の費用を渡された私だけど、半月もする頃には浪費癖がないと判断されたらしい。
 今は1ヶ月ごとのお金を渡されている。
 とはいえ、家賃や光熱費は吉浦さんの口座から引き落としだから、食費や生活用品などの消耗品に使うのだ。

「……どうせ、お前は食べることくらいしか楽しみがないんだろう。そこをケチるな」

 最後に付け加えられて、また顔が赤くなる。
 すっかり食いしん坊キャラと思われてしまったらしい。

「……あの、今朝お腹が鳴ったのは、ただの生理現象というか……」
「それだけで判断している訳じゃない」

 おずおず言った私に、吉浦さんの呆れたような視線が返ってきた。

「食事の一口目を食べたときの顔を見れば分かる」

 私はもっと顔を赤くして、手で両頬を押さえた。

「……そんなにいい顔してますかね……?」
「今度、鏡で見てみるか?」

 吉浦さんが言うのはたぶん、冗談のつもりだ。

「や、やめときます……」

 私が困り顔で言うと、吉浦さんは少しだけ、笑ったーーように見えた。

 その貴重な笑顔が、最近ちょっとだけ、胸に苦しい。

「あっ、あの、じゃあ明日の朝食は? パンでいいですかね?」
「任せる」
「了解いたしましたっ!」

 へなちょこな敬礼で答えると、吉浦さんは何事もなかったかのように止めていた手を動かし始めた。

 ***

「あっ、吉浦さん、これも……もしよければ」

 玄関で包みを差し出すと、吉浦さんが不思議そうな顔でじっと見つめた。

「これは……?」
「お弁当です!」

 言ってから、はっとする。
 今まで作れと言われたこともないのに、出過ぎたことをしてしまっただろうか。

「あっ、なんか出張とか、食べる時間なさそうですかね?」
「いや……今日は特に」
「それなら……もしよければ」

 吉浦さんはちょっとためらった後、包みを受け取ってくれた。
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