家ナシ女子は能面社長に拾われる~今日もいい日になりますように!~
 パンパンと頬を叩くと、両手でこぶしを作って「ふんっ」と気合を入れた。

 ーー宮城県、仙台市。
 ここ最近、いろいろーーほんとにいろいろあった私だけど、とにもかくにも、どうにかこうにか、ここまで来た。
 私にとっての新天地、になるはずの場所。
 きっと、なんとなく、それとないうちに、どうにかなるはず!

 うんうんとひとり頷いて立ち上がる。
 背中にリュック、腕にはボストンバッグを抱きかかえて通路へ滑り出た。
 次いで、キャリーバッグを置いたはずの座席裏を見やり……

「あれっ?」

 ない。
 ないってば、ない。
 私のキャリーバッグ!
 なんで? どうして?
 もしかしたら、転がって行っちゃった?
 思って周りをきょろきょろ見渡す。

 それでも、やっぱり、ない!!
 うぇあ・いず・まい・きゃりーばっぐ!?

 脳内で外人さんがムンクの叫びを象ったとき、新幹線が停まってドアが開いた。
 ぴんぽん、と呑気な音が響いて、人が外へ流れ出す。

「えっ、嘘っ」

 目的地はここなのだ。降りない訳にはいかない。
 けど、でも、私の、荷物が――

「あっ――」

 混乱している間に、後ろから来たサラリーマンに、ぐいぐい背中を押されてホームに降り立つ。
 ぴゅぅっと吹く風は冷たくて、ブルブルっと身震いした。
 降りる人が次々続いて、私はホームで立ちすくむ。
 頭の中はすっかり混乱状態だ。

 どうしたらいいんだろう。あの荷物がなくなったら……
 「詰み」だ。完全に、詰んだことになる。
 でも、確かに、見える範囲にはありそうになかった。
 もしかして、誰かに盗まれた?
 そんな、他人が盗んで嬉しいものなんて、何も入ってないのに!

 泥棒さーん! それ、お金になるもの何も入ってませんよー!
 他人の役にたつものも、何も入ってませんよー!!

 もし泥棒さんの姿が見えたら、そう教えてあげたいくらいだ。けど、実際には私の鞄を持った人なんてどこにもいない。
 泣きそうになって顔が歪む。
 どうしよう。どうすればいいんだろう。どうするべきなんだろう。

 考えようとするけど、具体的なことは全然、まったく、思い浮かばない。
 ああ、困った。

 降車する人がいなくなると、ホームで待っていた人が乗り込んでいく。
 その横で立ちすくむ私を気にする人など、誰もいない。

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