家ナシ女子は能面社長に拾われる~今日もいい日になりますように!~
 どうしよう、どうしよう、どうしよう――

 アナウンスが新幹線の出発を告げた。
 特有のメロディックな音が鳴り、プシュ―、という音と共にドアが閉まる。

 え、え、え。
 行っちゃう――

 自分が乗ってきたーーそして荷物を乗せてきたはずの新幹線が動き出して、ようやく私の身体が動いた。

「ま、待って――!」

 手を伸ばして叫ぶけれど、当然止まるわけもない。
 乗り込むときには「かわいー!」なんてご機嫌だった緑色の新幹線は、あっという間に駅を離れ、見えなくなってしまった。

 ***

 ああ――いったい、どうしたことでしょう。
 二つの荷物を膝に抱え、私はホームのベンチで途方にくれていた。

 ――慌てたときこそ、落ち着きなさい。

 お母さんはよくテンパる私にそう言った。
 勧めてくれた方法は、脳内会議を開くことだ。

 「うぇあ・いず・まい・きゃりー!」と叫ぶ金髪の私に、眼鏡をかけた私が声をかける。

「どうかしましたか?」
「私のバッグがなくなってしまったの!」
「バッグ。中には一体何が?」
「何が――」

 あのキャリーには何が入っていたっけ。
 私にとって一番大事なものはごく一部。とても小さい上に、他の人にとってどうでもいいものだ。
 その他には。

「よれよれの服と」
「服」
「よれよれの下着と」
「下着」
「河原さんにもらったゲーセンで取ったぬいぐるみと」
「ぬいぐるみ」

 脳内で繰り広げられる会話に、私は頭を抱えた。

 ああ、駄目! やめて! あんなの、どこかで誰かが見つけて開けて、所有者確認なんてされたら、とてもじゃないけど名乗りだせない。
 恥ずかしくて死んじゃう! 死んじゃうよ!!

 羞恥心で半泣きになりながら、私は切ないため息を吐き出す。

 それでも、探さない訳にはいかないんだ。
 だって、現在、私の所持金は約二万円。
 ここ、仙台に来るためにほぼ同額を使ってしまったから、それがほぼ全財産なのだ。
 仕事も家もない、身寄りもいない。

 そんな私が、相談に行くべき人の住所――
 それを書いた母の手紙が、あの鞄に入っているんだから。

02 さかのぼること、1ヶ月前?
 しかし、世は無情――
 なんの収穫もなおままに、気づけばすっかり夕方になってしまった。
 仙台駅の新幹線のホームで。
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