家ナシ女子は能面社長に拾われる~今日もいい日になりますように!~
 ベンチに座り、日の暮れた空を眺めながら、私は絶望していた。
 何も食べずにいたので、お腹がぐぅと空腹を訴える。

 でも、お金を無駄遣いするわけにもいかないのだ。
 ああ、ごめんねベイビィ。でも、お金が限られているのよ。
 ぴゃーぴゃーと泣いて空腹を訴える赤ん坊の幻想にそう声をかけ、私は深々とため息をついた。

 駅員さん、近くの交番、売店のおばちゃん。
 いろんな人に聞いてみたけど、キャリーバッグは見つからない。
 もちろん、乗った新幹線も調べてもらったけど、やっぱり見つからなかったそうだ。

 やっぱり、誰かに盗まれたんだろうか……

 脳裏をよぎって、またしても悲しくなる。

 ううう。泥棒さん。盗んだって、何もいいもの入ってないよ。
 私のよれよれの下着と洋服と、ちいちゃいぬいぐるみと、あとは――

 ガラガラガラと音がして、黄色いキャリーバッグが前方を転がっていくのが見えた。
 私ははっとして、立ち上がる。

 私の脳裏で、探偵帽を被りパイプを持った私が言った。
「犯人は必ず、犯行現場に戻って来る」
 そんな妄想を振り払い、もう一度キャリーバッグを見つめる。

 似てる。
 そっくりだ。
 間違いない、あれは――!

「私のキャリーバッグ!!」

 叫ぶや、持っていた荷物をその場に投げ捨てて走った。
 周りの人がぎょっとした顔で振り返るのを気にもせず、私はキャリーバッグをめがけてとびかかる。

「この泥棒!」

 叫んだ言葉に、周囲がざわめいた。

「――何を言っているんだ!?」

 キャリーバッグを手に振り向いたのは、眼鏡をかけたサラリーマンだった。
 ふわりと漂った柔軟剤の香りが、すごくいい匂いでぽかんとする。

 ……あれ? なんか、泥棒しそうにない感じの人だなぁ。

 ちょっとだけ冷静さを取り戻した私は首をひねったけれど、鴇すでに遅し。
 知らない内に、周りのざわめきが近くなり、その中の一人がサラリーマンの腕をとらえた。

「おい、何を盗ったんだ!」
「いや、違う! 人違いだ!」
「何だと!」

 私がぽかぁんとしているうちに、駅員さんも周りの人も、わやわやと盛り上がってしまって、あっという間にサラリーマンが確保されてしまった。

「何も盗ってなんかないっていうのに――」

 恨めし気に私を睨んだ目が、ふと驚きに見開かれる。

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