家ナシ女子は能面社長に拾われる~今日もいい日になりますように!~
「……お前は、まさか……」
「いいから、とにかく一緒に来てください! 駅員室で話を聞きます! ――君も準備して!」
「あっ、あ、はいっ」

 私がわたわた頷いて、はっとする。
 殴り捨ててしまっまリュックとボストンバッグは……
 思って辺りを見回すと、鞄を預かってくれていたおじいさんがそっと差し出してくれた。

「あ、ありがとうございます……」

 すみません。なんか、迷惑かけてすみません。
 どうもどうも、お騒がせしました。ええと、でもあの、見世物ではないのでこの辺で……

 ぺこぺこ周りに頭を下げてながら、私は駅のホームを、駅員さんに導かれるまま降りて行った。

 ***

「中に入ってるものはなんですか?」
「仕事道具です」

 私への質問に即答するサラリーマンに、駅員さんはうさんくさそうな目を向けた。黙って私を見られ、答えを促される。

「……服とか……です」

 私がおずおず答えると、サラリーマンはやれやれと疲れたようなため息をついた。

「そこまで言うなら、開けて見てもらえばすぐ分かる。中には確かに俺の着替えも入ってるが、書類とパソコンだ」

 淡々と言って、てきぱきとキャリーバッグを開け始めた。
 その手つきは慣れたもので、銀縁眼鏡の奥の目はあくまで冷静だ。
 ガチャっと開けたとき、「私のヨレヨレパンツが見えたらどうしよう」とちょっとだけ身構える。
 けれど、鞄の中には、男性が言った通り、味気ないビジネス用品が並んでいた。
 ほっとすると同時に、がっかりする。

 ーーああ、これでまた、振り出しに戻ってしまった。

「確かに、彼女のではないようですね」

 がっかりと肩を落とした私と鞄を見比べ、戸惑ったように駅員さんが言う。
 サラリーマンはふんと鼻で笑った。

「鞄を失くしたのか? ただの服ならまた買えばいいだろう」

 私は思わず、むっとした。

「お金持ちには分からない、庶民の暮らしってもんがあるんですっ!!」

 いーっと歯と敵意をむき出しにすると、インテリーマンは少し面食らったようだった。

「……それに」

 私は言葉にしかけて、やめる。
 インテリーマンは黙って、私を見下ろしていた。

「お金で買えないものだって、この世にはたくさんある……」

 駄目だ。関係ないこの人に、何を言ったって意味がない。
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