パイロットパパは、三つ子とママを諦めない
 鏡の前で薄くファンデーションを重ね、口紅も落ち着いたピンクを選び、邪魔にならないよう髪を後ろでひとつにまとめる。
 私の部屋は玄関に近い北側にあり、リビングとは反対側に位置している。その部屋の唯一気に入っているところは、家に誰かがいても顔を合わせることなく出入りできることだった。

 以前、一度だけ琴音と鉢合わせたことがある。
『安っぽい服着て、どこに行くの? その格好、新しい面接?』

 そんな言葉で馬鹿にされたが、説明したところで理解されるとは思えなかったし、言い争ったところで何かが変わるわけでもない。

 今日は誰にも顔を合わせずに済んだことにほっとしながら、私は私の仕事をするだけだと気持ちを切り替え、家を出た。
 最寄駅から浜(はま)松(まつ)町(ちょう)へ向かう電車に乗り込み、快速なら十分な時間の余裕があると胸をなで下ろした時だった。
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