愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
十月の第四週、中間リハーサルの日。

私は来賓の配置図を読み違え、車椅子のゲスト用に確保していた通路の一部を、別のスタッフに「空いています」と伝えてしまった。

椅子が運び込まれた直後に気づいて、血の気が引く。

幸い本番前で、大事には至らなかった。それでも京介さんの声は、これまで聞いたことのないほど低く尖っていた。

「これが本番だったら、どうなっていたと思う」

「……申し訳ありません」

「謝罪はいらない。原因を言え」

周囲の視線が痛い。言い訳のしようがなかった。

「配置図を自分一人の判断で確認したまま、再確認を怠りました」

「迷ったら聞けと言ったはずだ」

喉が詰まった。

『何度でも袖を引いていい』

初日の夕方にもらった言葉を、忙しさを理由に使わなかったのは私だ。

「次はない。もう一度同じ甘さを見せたら、この現場から外す」

感情のない、平らな声。怒鳴られるより深く刺さって、私はただ頷いて立ち尽くすしかなかった。
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