愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
十一月の第二週。会場の下見に、一人の来賓が訪れた。

「四宮紗英(さえ)です。式典には、父の代理で伺います。会場の案内を、あなたにお願いしたいと聞いて」

淡い藤色のコートを羽織った、凛とした女性だった。切れ長の目が、まっすぐこちらを見ている。

四宮。噂で聞いた、あの家の名前だ。

庭園を案内する間、紗英さんはほとんど相槌だけで、時折ふと足を止めて私の話を聞いていた。

橋に差しかかると、石段の手前で立ち止まり、しばらく段を見下ろしていた。ヒールのせいだろうか。問う前に、彼女はもう踵を返していた。

「京介さんは、ここでは何を?」

「私の、教育係です」

「あの方が、新人に手をかけるなんて。珍しいこと」

何か言い返そうとして、うまい言葉が出てこない。

「席のことで、一つお願いがあるの」

テントの前で、紗英さんは振り返った。

「来賓席の私の席を、京介さんの隣にしていただけないかしら。久しぶりに、ゆっくりお話ししたくて」
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