愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
式典が終わり、次の対応へ呼ばれていく京介さんを、控室へ続く廊下で追いかけた。

「……どうして、教えてくれなかったんですか?」

人気のない廊下に、二人きりだった。京介さんは足を止め、視線を落とす。

「言えば、今までの距離が壊れる気がした」

その言葉より先に、頭に浮かんだのは別のことだった。苗字。立場。そして、紗英さんの隣に置かれた、「ご要望により」の席。

私だけが、何も知らされていなかった。

「最初から、対等じゃなかったんですね」

やっと絞り出せたのは、問いにならない言葉だった。縁談のことも、席のことも、聞けないまま喉の奥に沈んでいる。聞いてしまえば、答えを知ってしまう。

「前の職場では、肩書きや数字でしか見てもらえなくて。だから、ここで一人の人間として見てもらえたのが、嬉しかったのに……」

視界が揺れて、続きが途切れる。

「私には、話してくれても良かったのに。騙してたんですか?」
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