愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
足から力が抜けそうになり、ドアノブにすがる。
寝癖のついた髪に、色あせたスウェット。思い出した途端、手が髪へ上がりかけた。けれど目の前の人は、そんなものには目もくれず、私の顔色だけを見ていた。
「三回、電話したんだが、出なかった」
低い声が、いつもよりずっと早口だった。
「早退したと聞いて……人事に、お前の住所を頼んだ。職権乱用だと、分かっている。走ってきた」
走って。この人が、息を切らして。
「待つと書いたのは、俺だ。でも、待てなかった」
飾りのない言葉が、まっすぐ届いた。あの式典の日から張りつめていたものが、少しずつ緩んでいく。
「顔色が悪い。熱は?」
彼の手が、額に伸びてくる。触れる直前、わずかにためらった。あの廊下で、宙に残された手の続きだった。
今度は引っ込められなかった。ひやりとした掌が、額に触れる。
寝癖のついた髪に、色あせたスウェット。思い出した途端、手が髪へ上がりかけた。けれど目の前の人は、そんなものには目もくれず、私の顔色だけを見ていた。
「三回、電話したんだが、出なかった」
低い声が、いつもよりずっと早口だった。
「早退したと聞いて……人事に、お前の住所を頼んだ。職権乱用だと、分かっている。走ってきた」
走って。この人が、息を切らして。
「待つと書いたのは、俺だ。でも、待てなかった」
飾りのない言葉が、まっすぐ届いた。あの式典の日から張りつめていたものが、少しずつ緩んでいく。
「顔色が悪い。熱は?」
彼の手が、額に伸びてくる。触れる直前、わずかにためらった。あの廊下で、宙に残された手の続きだった。
今度は引っ込められなかった。ひやりとした掌が、額に触れる。