愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
「……見てたよ」
缶コーヒーを持った珠希が、柱の陰から出てきた。
「専務でしょ、あの人。千紗は、思い出にしたいの?」
「……したくない。でも、また彼にあの目をさせたらって思うと怖いの」
「怖くても、メッセージ送ればいいじゃん。一行でいいんだから」
期限が来て、このまま彼がいなくなることだけは、絶対に嫌だった。ひと月近くも待たせたままの人を、思い出になんてしない。
◇
その夜。私はスマホを手に取り、トーク画面を開いた。
信じてほしかったこと。寂しかったこと。全部を書いたら長すぎて、全部消した。残ったのは、一行だった。
『お待たせしました。お話を、聞かせてください』
深呼吸を一つして、送信を押した。既読は、つかなかった。
翌朝、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。枕元のスマホが、一度だけ光る。
京介さんからの返信が、一通だけ届いていた。
缶コーヒーを持った珠希が、柱の陰から出てきた。
「専務でしょ、あの人。千紗は、思い出にしたいの?」
「……したくない。でも、また彼にあの目をさせたらって思うと怖いの」
「怖くても、メッセージ送ればいいじゃん。一行でいいんだから」
期限が来て、このまま彼がいなくなることだけは、絶対に嫌だった。ひと月近くも待たせたままの人を、思い出になんてしない。
◇
その夜。私はスマホを手に取り、トーク画面を開いた。
信じてほしかったこと。寂しかったこと。全部を書いたら長すぎて、全部消した。残ったのは、一行だった。
『お待たせしました。お話を、聞かせてください』
深呼吸を一つして、送信を押した。既読は、つかなかった。
翌朝、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。枕元のスマホが、一度だけ光る。
京介さんからの返信が、一通だけ届いていた。