愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
ざわめきの中、仕事を認められたことと、隣に立つことを認められたことは別だ、と気づく。足元が冷えかけた時、会長の声が響いた。

「彼女の仕事ぶりを認めたのは私だ。隣に立つ資格は、これから二人で積みなさい」

その一言で、握られた手の温もりが、ようやく指先まで届いた。

「……お前は、何も背負わなくていい」

京介さんが低く言う。私は首を横に振った。

「背負わせてください。半分は私が」

彼の手が、強く握り返してくる。私は手を離さないまま一歩前に出て、初日に教わった角度で深く頭を下げた。

「水無瀬千紗です。まだ研修中の身ですが、京介さんの隣に恥じない人間になれるよう、この場所でやり遂げます」

顔を上げると、四宮社長の拍手をきっかけに、拍手が高台に広がっていく。専務が一拍遅れて、手を叩いた。

その時、周囲から、カウントダウンの声が湧き上がった。

「……5、4、3、2、1──」
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