愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
零時を告げる鐘の音とともに、冬の夜空に無数の光が咲き誇る。皆が一斉に空を見上げる中、京介さんの手が、私の頬に触れた。
入社初日に、掌の位置を直してくれた手と、同じ温度。
気づけば、空いたほうの手で、彼の袖をそっとつまんでいた。
初日の朝、不安に震えながら引いたあの袖。けれど今は、その手が少しも震えていない。
もう、お互いに迷子はどこにもいなかった。
どちらからともなく、唇が重なる。
聞こえるのは、遠い歓声だけだった。袖を引いた初日から、ここまで来た。触れた場所だけが、いつまでも熱かった。
唇が離れると、京介さんは頬まで赤くして、それでも幸せそうに笑った。
人混みの向こうで、橘さんがハンカチを目元に当てている。珠希が、隣の同僚に叫んでいるのが聞こえた。
「ほら見たか。私、ずっと応援してたんだから!」
思わず声を上げて笑った。
「水無瀬さん」
静かな声に振り向くと、紗英さんが立っていた。
「お邪魔して、ごめんなさいね」
少しも悪びれずに言ってから、彼女は私にだけ聞こえる声で続けた。
入社初日に、掌の位置を直してくれた手と、同じ温度。
気づけば、空いたほうの手で、彼の袖をそっとつまんでいた。
初日の朝、不安に震えながら引いたあの袖。けれど今は、その手が少しも震えていない。
もう、お互いに迷子はどこにもいなかった。
どちらからともなく、唇が重なる。
聞こえるのは、遠い歓声だけだった。袖を引いた初日から、ここまで来た。触れた場所だけが、いつまでも熱かった。
唇が離れると、京介さんは頬まで赤くして、それでも幸せそうに笑った。
人混みの向こうで、橘さんがハンカチを目元に当てている。珠希が、隣の同僚に叫んでいるのが聞こえた。
「ほら見たか。私、ずっと応援してたんだから!」
思わず声を上げて笑った。
「水無瀬さん」
静かな声に振り向くと、紗英さんが立っていた。
「お邪魔して、ごめんなさいね」
少しも悪びれずに言ってから、彼女は私にだけ聞こえる声で続けた。