愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
「イブの夜のこと、実は試していたの。あなたが、あの方の隣で折れない人かどうか」

悪戯っぽく、けれど今度は、目も笑っていた。

「縁談を断りたいのは、私も同じでした。家業は、私が継ぎたい。けれど、父には言えずにいたの。父の膝のことも、母には隠していて、私の口からは言えなかった。だから『出ません』としか、言えなかったのよ。……準備するなと言われて、やめる人なら、父の膝は預けられないもの」

あの日の忠告の意味が、ようやく分かった。

「あの個室で、庭で迷う人の道なら知っている、と言い切ったでしょう。この人なら、父の歩く道も作れる、と思ったの。……父と話せたのは、あなたのおかげよ」

紗英さんは微笑んで、人の輪へ戻っていった。私はその背中に、深く頭を下げた。
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