愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
初日に「頑張ります」と言って叱られた私が今、「やり遂げた」と言われている。目の奥が熱くなって、瞬きで堪えた。

「……京介さん。そのポケットの飴、頂けますか」

彼は、開けないまま持っていた包みを、私の掌に乗せた。口に含むと、ミルクの甘さが広がった。

「ミルクティーと、同じ味ですね」

「同じ味を、分けたかった」

「今年も、私にだけ甘いままですか?」

京介さんは、視線を逸らした。それから、観念したように私の目を見た。

「甘くしない努力は、もうやめた」

言葉の意味を知って、頬が熱くなる。彼が、私の肩を引き寄せた。耳元に、唇が寄せられる。熱い吐息が、髪に触れた。

「もう、絶対に離さない」

信じられないほど、甘い声だった。愛想のかけらもなかった人が、私にだけこんな声を出す。

顔を上げると、すぐそばにあの笑みがあった。初日のロビーで、一度だけ見かけた笑み。

見間違いなんかじゃなかった。そして今はまっすぐ、私だけに向けられている。
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