愛想のない教育係が、私にだけ甘い理由
月の終わり、パリの姉妹ホテルから打診書が届いた。現場提案シートが向こうの支配人の目に留まり、水無瀬千紗を一年間の研修に、という指名だった。
承認欄に署名するのは、俺の役目だ。ペンを持ち上げて、置いた。署名欄は空白のままにした。
夕方、千紗に封書を差し出した。
「パリの姉妹ホテルから、一年間の研修の打診が来ている。行きたければ、行け。俺は止めない」
言いながら、声が軋んだ。
「京介さんは、それでいいんですか?」
「良くはない。……お前に、そばにいてほしい」
言った瞬間、顔が熱くなった。彼女の意志を尊重すると決めた、そばからこれだ。けれど彼女は笑わず、封書を両手で持ったまま長く黙った。
「……一晩、考えさせて下さい」
「ああ。急がない」
承認欄に署名するのは、俺の役目だ。ペンを持ち上げて、置いた。署名欄は空白のままにした。
夕方、千紗に封書を差し出した。
「パリの姉妹ホテルから、一年間の研修の打診が来ている。行きたければ、行け。俺は止めない」
言いながら、声が軋んだ。
「京介さんは、それでいいんですか?」
「良くはない。……お前に、そばにいてほしい」
言った瞬間、顔が熱くなった。彼女の意志を尊重すると決めた、そばからこれだ。けれど彼女は笑わず、封書を両手で持ったまま長く黙った。
「……一晩、考えさせて下さい」
「ああ。急がない」