神僧物語
<770年(80年前)、都>

兄
『永逢(とわ)…どうか…幸せに…生きて…。』

永逢(とわ)
「兄…さま…!」

都を襲った流行り病で、兄さまが他界。

ほとんどの者が病に倒れたが、私だけはなぜか平然としていた。

都でただ1人元気な私は、兄さまや姉さまだけでなく、都中の看病に走った。

叔母
『永逢(とわ)…ありがとうね…。』

永逢(とわ)
「これくらいさせてください、叔母さま。」

叔母
『永逢(とわ)は平気なのかい?』

永逢(とわ)
「平気ですよ。」

叔母
『それはよかった…にしても不思議だね。』

永逢(とわ)
「不思議…ですか?」

叔母
『永逢(とわ)は流行り病も平気だし、いつまでも美しくて…まるで何かに守られているようだね…。』

永逢(とわ)
「…守られ……そ、そうですね!なぜでしょう?あはは…。」

叔母
『お兄さんは気の毒だったね…お姉さんの様子はどうだい?』

永逢(とわ)
「昨日、看病に行ってきました。だいぶよくなりましたよ。」

叔母
『よかった…永逢(とわ)も気をつけるんだよ?』

永逢(とわ)
「はい、気をつけます。」



この時の流行り病で、次の太政大臣の有力候補4人が揃って他界。

政務に動ける者がいなくなり、都は混乱した。

ひそひそ…ひそひそ…

『永逢(とわ)だけ流行り病にもケロッとしてる…どうなってるの?』

『20年前の”神僧戦(しんそうせん)”で呪いを受けたんですって?』

『怖いくらいの美しさも、呪いのしわざ…?』

この頃から、私に不穏な噂が立つようになった。

看病に訪れた屋敷でも、私は少しずつ疎まれるようになった。

永逢(とわ)
「”何かに守られている”だなんて…とんでもない…。」

政権が揺れ、大切な家族が1人ずつ旅立っていった。

荒れる国の未来に、1人で放り出される運命が、くっきりと見え始めた。
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