僕に好かれて困った君、愛でたい!
リキは油性ペンで、裏面に大きく名前を書き込んだ。
「なーおー、っと」

ナオは目を丸くしてその成り行きを見つめていた。

NAO♡
小さいハートまで書かれた。

ーーーーーーーー
ナオは、リキの爪を綺麗にしていく。
時々ウィーンと機械音が唸った。

リキは、
「なんさーい?」と聞く。
ナオから、
「はいたーい」と返ってきた。

「はぁ?」
リキは思わず片眉をあげた。

「あ、沖縄の挨拶ですよね?」
ナオが嬉しそうに笑っている。

リキは意味不明、という顔をして
まだ施術していない方の手でコーヒーを掴み
ズズッと音を立てて飲んだ。

「年齢聞いたんだけど!」
「あ、ごめんなさい!聞き間違えて。えっと25です」

「へぇ、僕より3つ歳上なんだ」
リキの目がキラッと光った。
が、ナオは爪を見ていて気づかなかった。

リキは、さっきまでの最悪な気分が少しだけ浮上する。

「kickthroughの末っ子ですもんね」
ナオは、リキの指先を優しく持ちあげ、爪の状態を確認する。

「敬語使わないでいいよ、僕は歳下だし。
リキって呼び捨てしてよ、ナオちゃん♡」

ナオは顔を上げてリキを見た。

「ん?どしたー?」


ナオの心臓が跳ねた。
どしたー?って、そんな可愛い顔で
満面の笑みで聞かれても困る!

リキの顔を、そして綺麗な瞳を、こんな間近で見ることになるなんて!
この前の野外ライブだって、前から27列目で、目の色なんて認識できなかったし。

それにしても、雑誌では拝見してたけど
とても綺麗な色の瞳で吸い込まれそう……。
確かクォーターなのよね?
あーそれにしても、
あのkickthroughのリキが……。
推しがっ!
目の前に~!

店に入ってきた瞬間、思わず2度見したし。
まさか……!わたしの店に?って。
そのリキが更に、わたしの名前を2度も呼ぶなんて!!

今日がわたしの最後の日ですかっ?
それとも、最良の日ですかっ?

「あ、えーと。今回デザインはどうします?」

「だめ。敬語だめ!」

ナオは一瞬躊躇いつつも、顔を真っ赤にして言った。
「リキ……さん、今回はどうしま、する?」

ぷっ、とリキは吹き出した。
「ふぁっ可愛い~ナオちゃん」

「か、可愛い!?」
ナオの瞬きの回数が異様なほど増えた。

リキは、ナオの目をジッと見つめ、
さらに指を絡めながら言った。

「ねぇ、僕の彼女になって♡」

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