モテ男とデキ女の奥手な恋
橘が出してくれた味噌汁で人心地ついたものの、まだ頭痛が引かないので、俺はそのままベッド上でごろごろしていた。
「私、シャワー浴びてくるね」
「どーぞ」
「テレビつけててもいいよ」
「どーも」
渡されたリモコンを受け取り、答える。
しばらくすると、閉められたドアの向こうから、水の流れる音が聞こえてきた。
そこでようやく、活動を停止していた俺の頭はゆっくり動き始めた。
一度だけなら、事故や気まぐれと言い張れる気だった。が、こんなに早く二度目が来るとはーー
ちりりと胸を焼く罪悪感。俺と違って、行為だけの関係に慣れているとは到底思えない女を、二度その部屋で抱いた。
違う意味での頭痛を感じて、頭をおさえる。
ーーなんで俺は俺なんだろう。
いきなり中二病じみた思いが込み上げて、深々と嘆息した。
もう30過ぎたオッサンが、何を学生のようにうじうじと。
ーー隼人なら、こんなことにはならないに違いない。
顔立ちは似ているのに、立ち居振る舞いが全く違う、7つ離れた弟を思い出す。
憧れ、に近かった。
清廉。誠実。そういう言葉の似合う弟。
これだけ歳が離れていて、俺の方がいつまでも子供じみている。情けなさにうんざりする。
色んな女と寝たし、色んな人間と飲んだ。
だから何だっていうんだろう。
シャワーの音が止まった。しばらくの間、ドライヤーの音がして、その後でナチュラルメイクの橘が出てきた。
「どう?少しは楽になった?」
簡単に髪をねじって後ろで留めた橘が近寄って来る。
俺はその姿をじっと見た。
「……何?」
うろたえる橘。
シャワーで上気した肌の赤みが少し増す。
ーー分かりやすい奴。
ろくに経験もないくせに。
大人ぶりやがって。
俺はゆっくりと手を伸ばした。
橘の頬に触れた瞬間、橘がびくりと身をすくませる。
ーーどうして、俺なんだよ。
俺は静かに手を頬に添え、顔を近づけた。
橘が強く目をつぶる。俺はふっと笑って、額を合わせた。
額がぶつかると、橘は恐る恐る目を開けた。焦点が合わないくらい間近なところに互いの目がある。
ーー放って、おけない。
でも、ーー
「……神崎?」
かすれた声で、橘が呼んだ。
俺はその頬に添えた手を、静かに後ろ頭にずらす。
橘の頭を胸に抱き寄せて、囁いた。
「ーーごめんな」
他に、言葉が見当たらない。
橘の身体が強張り、わずかに震える。
深呼吸を繰り返して、涙を我慢しているのが分かった。
俺は静かに、もう一方の手を橘の背中に回し、抱きしめた。
「私、シャワー浴びてくるね」
「どーぞ」
「テレビつけててもいいよ」
「どーも」
渡されたリモコンを受け取り、答える。
しばらくすると、閉められたドアの向こうから、水の流れる音が聞こえてきた。
そこでようやく、活動を停止していた俺の頭はゆっくり動き始めた。
一度だけなら、事故や気まぐれと言い張れる気だった。が、こんなに早く二度目が来るとはーー
ちりりと胸を焼く罪悪感。俺と違って、行為だけの関係に慣れているとは到底思えない女を、二度その部屋で抱いた。
違う意味での頭痛を感じて、頭をおさえる。
ーーなんで俺は俺なんだろう。
いきなり中二病じみた思いが込み上げて、深々と嘆息した。
もう30過ぎたオッサンが、何を学生のようにうじうじと。
ーー隼人なら、こんなことにはならないに違いない。
顔立ちは似ているのに、立ち居振る舞いが全く違う、7つ離れた弟を思い出す。
憧れ、に近かった。
清廉。誠実。そういう言葉の似合う弟。
これだけ歳が離れていて、俺の方がいつまでも子供じみている。情けなさにうんざりする。
色んな女と寝たし、色んな人間と飲んだ。
だから何だっていうんだろう。
シャワーの音が止まった。しばらくの間、ドライヤーの音がして、その後でナチュラルメイクの橘が出てきた。
「どう?少しは楽になった?」
簡単に髪をねじって後ろで留めた橘が近寄って来る。
俺はその姿をじっと見た。
「……何?」
うろたえる橘。
シャワーで上気した肌の赤みが少し増す。
ーー分かりやすい奴。
ろくに経験もないくせに。
大人ぶりやがって。
俺はゆっくりと手を伸ばした。
橘の頬に触れた瞬間、橘がびくりと身をすくませる。
ーーどうして、俺なんだよ。
俺は静かに手を頬に添え、顔を近づけた。
橘が強く目をつぶる。俺はふっと笑って、額を合わせた。
額がぶつかると、橘は恐る恐る目を開けた。焦点が合わないくらい間近なところに互いの目がある。
ーー放って、おけない。
でも、ーー
「……神崎?」
かすれた声で、橘が呼んだ。
俺はその頬に添えた手を、静かに後ろ頭にずらす。
橘の頭を胸に抱き寄せて、囁いた。
「ーーごめんな」
他に、言葉が見当たらない。
橘の身体が強張り、わずかに震える。
深呼吸を繰り返して、涙を我慢しているのが分かった。
俺は静かに、もう一方の手を橘の背中に回し、抱きしめた。