モテ男とデキ女の奥手な恋

 俺は小学校から大学まで、ずっとバスケをやっていた。
 身長的にはゴール下を任されてしかるべきだが、ボール運びが得意なので、オールラウンダーとして重宝がられた。
 通った学校はバスケの強豪ではなかったけれど、中高では地区大会まで行き、他校の女子から声をかけられたことも何度かある。懐かしい思い出である。
 俺にとって、唯一自信を持って隼人に勝てると言えるものがバスケだった。
 勉強は隼人の方が間違いなくできる。運動は、学生のときのタイムなどを比べればトントンだが、今となってはどうしても年齢的に俺の方が負ける。
 人望、人徳、そういうものも、隼人の方が断然上だ。老若男女から信頼される。
 まあ、俺に忍耐力や包容力がないのは自覚しているが。
「行くで!」
 栄太郎が勢い込んでドリブルを始めた。当然隙だらけだが、いきなり横取りするのも大人げないので、少しの間様子を見る。
 公園はアスファルトになっていないので、石があるとドリブルが変な方向に跳ねる。
 新しいバスケボールが勢いよくおかしな方向に飛んでいった先に、たまたま隼人がいた。
 えらいパスするな。
 内心面白がりながら、ボールを追った。
 隼人は走りながらボールをキャッチし、ゴールに向かう。走りながらゴールするレイアップシュートを決めようとするが、そうはさせるかと俺が立ちはだかった。
 隼人は一歩大きく前に踏み出すと後ろに下がり、シュート。俺の指先が当たったボールは軌道を曲げられボードに当たる。
 隼人を抑え込んでリバウンドを取った。
「俺に勝とうだなんて百年早ぇよ」
「大人げないで、政人!」
 栄太郎は一人前に悔しがっている。隼人は相変わらず爽やかに笑った。
「兄さん、本気じゃない」
「手ぇ抜くのは失礼だろ」
 ふん、と鼻で笑いながら言う。隼人はけらけら笑った。
「だって、栄太郎。いつになったら一本取れるかな」
「政人がじいちゃんくらいになったら勝てるんちゃう」
「それで勝っても嬉しくねぇだろ、お前」
 言いながら、俺はボールを掲げた。
「さて、今度は俺がオフェンスだ。きっちり守れよー」
「負けへん!」
 栄太郎が俺の前で手を広げる後ろで、隼人は笑って身構えた。
< 22 / 119 >

この作品をシェア

pagetop