おかえりの温度
嘉晴の腕の中、膝の間に収まって、その胸に背中を預ける。
「あったかい」
「気持ちいいねぇ」
「天国ぅ」
「そうだねぇ」
ぽやぽやと眠りそうな私の頬に、嘉晴がキスをしてくる。
振り向くとまた唇に唇が重なって、私のお腹の前にクロスしていた手もそわそわと動き出す。
「……眠くなってきてたんだけど」
「うん。だから危険って思って」
「えー。このまま眠らせてくれないの?」
「えー。してくれないの?」
言い合いながら、嘉晴は私の脇をちょんちょんつついた。
これはくすぐってくるときの手つきだ。「ひゃぁ。やめてよ」と飛び上がると、嘉晴が笑いながら立ち上がった。
ざばざばぁ、とお湯が減っていって、水量が私の胸の下になる。
「ぁあーん。お湯が減ったぁ」
「あはははは。だってこのままじゃ寝ちゃいそうだから」
嘉晴は笑いながらタオルで身体を拭っていく。私はぷぅっと頬を膨らませた。
「甘やかしてくれるんじゃないの?」
「甘やかすよ。ほら、おいで。拭いてあげるし髪乾かしてあげるから」
「身体は自分で拭く~。くすぐられるし」
「くすぐらないよ」
笑いながら嘉晴が差し出した手を取って、私は唇をとがらせたまま湯船から出た。
私がタオルで身体を拭っている間に、嘉晴がパジャマを身につけていく。ドライヤーをセットしているのを見ながら、私もパジャマを身につけた。
髪を乾かそうとした嘉晴が眉を寄せてタオルを掴む。
「泰子、髪の拭き方甘すぎ」
「えー。だって、嘉晴が乾かしてくれるっていうから」
「これじゃ時間かかるでしょ」
そう言う嘉晴は、タオルで髪をくくってある。男の人の髪の短さだとあれで乾くんだろうか。彼がドライヤーを使っている姿って、そういえばほとんど見たことがない。
もう一度髪を拭い直して、ブォォー、とドライヤーの音がする。温風が後ろから首筋を撫でて頭を撫でて、なんとも気持ちいい。
「寝ないでねー」
「うーん」
「寝たらくすぐるよー」
「えー」
「じゃあ、その間にはい、歯磨き」
ドライヤーの音の合間でやりとりして、歯ブラシを渡された。ワシワシ歯を磨くけれど、髪に触れる嘉晴の手と温風の心地よさは格別だ。ぐらんぐらん頭が揺れ始めた私を見て、嘉晴が「もぉ」と呆れたように後ろから抱きしめた。
「起きてるぅ?」
「起きてるぅ……ねむい」
「だめだってばぁ」
言いながら、嘉晴は後ろから私の首筋を吸った。かと思うと、つつ、と舌で耳まで辿る。吐息混じりに耳の縁を舌で辿られて、肩を上げた。
「それ弱い~」
「知ってる」
ふ、と笑うその顔は、大人になって初めて知った。いつものほんわかした顔に小さい頃からのおもかげがある分、その顔を見るたびちょっと新鮮な気分がするし、ドキリとする。