おかえりの温度

 嘉晴は、たぶん、なんか、エロくしようとか、そういう演出みたいなのをぜんぜんしようとしない。私が気乗りしなければ、そのまま、ほんとにただの幼なじみとして、ぐだぐだしてまったりして過ごし続けてもぜんぜん平気なんだろうと思う。
 私も嘉晴も、中高生のときにはそれぞれ彼氏彼女がいた。けれど、なんでか当たり前みたいにお互いのところに戻ってきた。
 それぞれの親も、そんな私たちを「あいかわらず仲がいいわね~」なんて呆れていたけれど、大学、就職、とすすむ間に、「一緒に暮らそうか」という話になった。私の就職先と彼の大学は実家から通うより家を借りた方が便利そうだったし、ずっと、恋人はいないけど嘉晴がいる、みたいな感覚で、私の中では家族と嘉晴は別枠で、嘉晴にとっても同じだったらしいから、自然とそういう話になったのだ。
 うちの親は当然私たちの感覚が理解できなかったらしくて、「恋人でもないのに」と言われた。その話をすると嘉晴から「じゃあ、恋人になる?」と言われて、「じゃあそうしよっか」ということになった。
 ほんとにただの幼なじみだったなら、キスもセックスも抵抗があったかもしれない。けれど嘉晴とは、今さら感みたいな気恥ずかしさはあったけれど、触れられて嫌だとは思わなかった。むしろしっくりきた。「ようやくかー」みたいな。それは嘉晴も同じだったらしくて、初めて身体を重ねた夜はお互いに顔を見合わせて首を傾げた。
 「ほんとは好きだったのかなぁ」「そうなのかなぁ」みたいに、笑って、キスをして、もう一度互いに触れ合った。
 というわけで、今の嘉晴はもうすっかり私の「家族」で「恋人」だ。それでもやっぱり、「恋人」というよりは「嘉晴」で、私の中では別カテゴリー。私が口をすすいだら、「よっこいしょ」とお姫様抱っこで抱き上げられて、慌ててその首に腕を絡めた。あんなにひょろっとしてたのに、いつの間にそんな力をつけたんだろう、自然につくものなんだろうか、と思いつつ見つめた顔が私の視線に気づいて首を傾げる。

「なに? どうかした?」
「ううん。重くないの?」
「重くない、とも言えない」
「ひどい」
「あはははは。羽根がついてるみたいに軽いよって言った方がよかった?」

 それはそれで気持ちが悪そうだ。私はむすーっとしてその首にぎゅうっと抱きついた。
 嘉晴がその腕の中で目を閉じる。

「……あったかくて気持ちいい」
「……嘉晴だって」
「うん……そりゃそっか。風呂入ったばっかだし」

 互いに話しながら寝室に向かった。重いと言った割には安定した足取りで、嘉晴が私をベッドに下ろす。

「着陸ぅ」
「ふわぁ、お布団!」
「あっ、だから寝たらだめだってぇ」

 ベッドに嬉々としてのびのびした私の脇を、嘉晴がくすぐってくる。笑いながら身をよじる私に、嘉晴も笑って、私もやり返しているうちに、唇が重なって、互いの口の中に残った歯磨き粉のミントの香りが段々とどちらのものか分からなくなっていく。
 角度が変わるたび、部屋に水音と吐息が響く。ペアルックのパジャマを胸元までめくられて、脇に触れられると甘い声が漏れた。
 さっきまで笑い転げてたのと同じ場所なのに、どうして気分が高まると気持ちいいんだろう。

「んぁっはぁ、やっ……」

 私の片脇を指がつつつとたどり、もう片脇を舌がたどる。胸より先に脇に触れるのは、たぶんその方が私の反応がいいから。
 じわじわと愛撫が中心に近づいて、嘉晴の手が胸をやんわりと揉んだ。片方の頂きは口に含まれ、舌で転がされ、また甘い声が漏れる。

「嘉晴ぅ」

 腕を伸ばして、彼の頭を抱きしめる、頭を撫でて髪を掻き上げ、額にキスをする。嘉晴がちらと目を上げて微笑み、唇が重なる。彼の高ぶりが私の腿に押し当てられる。
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