【試し読み】転生公女は任期満了に伴い家族の元に帰らせていただきます~役立たずと捨てられましたが、『星詠み』は国を守る希少スキルですよ?~
……興味がなさすぎて、重要人物以外はあまり覚えていないのよね。
淡いピンク色の髪に琥珀色の瞳の、小柄な少女だった。
チェスターの腕にべったりと張り付いているところからすると、彼の新しい恋人だろうか。また頭の悪そうな子を選んだようだ。
チェスターは「何も考えていなさそうな子」が好きらしい。
以前噂になっていた複数の女性たちは、おしゃれとお茶会とおしゃべりにしか興味のないような令嬢たちばかりだった。
今回も何となく同系統だと思う。王太子の婚約者であり公女であるわたしの部屋に入ってきても、挨拶もなくぽーっとチェスターを見ている時点で間違いない。普通は挨拶をするなり入室を遠慮したりするものだ。
「ごきげんよう、殿下」
チェスターは好きにはなれないが、相手はまだ婚約者。
さすがに座ったまま無作法に眺めているわけにもいかず、わたしは立ち上がり彼に向かってカーテシーで挨拶をした。
なのに、チェスターは軽く手を振って面倒くさそうに言う。
「挨拶はいい」
いや、挨拶は基本だろう。王太子がそれでいいのか。
挨拶もしない王太子は、ピンク頭を伴って部屋にずかずか入ってくると、今まさにワゴンを押して部屋を出ようとしていたメイドにお茶を運んでこいと命じた。
メイドが頭を下げて急いで部屋を出ていく。王太子の機嫌を損ねれば即座にクビにされるからだ。
……せめてワゴンも一緒に押していけばいいのに。
何故部屋の隅に放置していく。まあ、慌てていたんだろうけれど。
チェスターがソファに座ると、ピンク頭もべったりと横にくっついて座る。
というかそろそろ、そのピンク頭を紹介してほしい。どこの誰だ。
わたしは仕方なくチェスターの対面のソファに腰を下ろした。
「御用件は?」
「待て。茶が運ばれてきてからだ」
挨拶はしないくせにお茶は待つらしい。よくわからない王太子だ。
「殿下ぁ、わたし、甘いお菓子が食べたいですぅ」
「そうか、わかった」
チェスターがローテーブルの上に置いてあったメイドを呼ぶベルを鳴らすと、ややあってから先ほどとは違うメイドがやってきて、チェスターを見てギョッとした。
「で、殿下!」
「遅い!」
「も、申し訳ございません……!」
まさか王太子がいると思わなかったのだろう。メイドは青ざめて頭を下げた。
「まあいい。先ほど違うメイドに茶を頼んだのだが、エイダが甘いお菓子が食べたいと言っている。ケーキか何かも持ってこい」
エイダ。なるほど、ピンク頭はそういう名前らしい。
……って、ああ。聞き覚えがあるわ。エイダ・アストン伯爵令嬢ね。
ウィーデル国でも中の下くらいに位置している伯爵家だ。妃教育で聞いた。
つまり、あまり重要な家ではないので、頭の隅に追いやられていたのだろう。
人間の記憶にも限界があるので、さすがに全員の貴族の顔と名前を覚えようとすれば頭がパンクする。特にわたしは公務がなければ部屋から出ないのだ。会う機会も少ないのだから記憶の定着にも時間がかかるというもの。ようは、優先順位が大切だ。アストン伯爵家はその優先順位が下だった。それだけだ。
淡いピンク色の髪に琥珀色の瞳の、小柄な少女だった。
チェスターの腕にべったりと張り付いているところからすると、彼の新しい恋人だろうか。また頭の悪そうな子を選んだようだ。
チェスターは「何も考えていなさそうな子」が好きらしい。
以前噂になっていた複数の女性たちは、おしゃれとお茶会とおしゃべりにしか興味のないような令嬢たちばかりだった。
今回も何となく同系統だと思う。王太子の婚約者であり公女であるわたしの部屋に入ってきても、挨拶もなくぽーっとチェスターを見ている時点で間違いない。普通は挨拶をするなり入室を遠慮したりするものだ。
「ごきげんよう、殿下」
チェスターは好きにはなれないが、相手はまだ婚約者。
さすがに座ったまま無作法に眺めているわけにもいかず、わたしは立ち上がり彼に向かってカーテシーで挨拶をした。
なのに、チェスターは軽く手を振って面倒くさそうに言う。
「挨拶はいい」
いや、挨拶は基本だろう。王太子がそれでいいのか。
挨拶もしない王太子は、ピンク頭を伴って部屋にずかずか入ってくると、今まさにワゴンを押して部屋を出ようとしていたメイドにお茶を運んでこいと命じた。
メイドが頭を下げて急いで部屋を出ていく。王太子の機嫌を損ねれば即座にクビにされるからだ。
……せめてワゴンも一緒に押していけばいいのに。
何故部屋の隅に放置していく。まあ、慌てていたんだろうけれど。
チェスターがソファに座ると、ピンク頭もべったりと横にくっついて座る。
というかそろそろ、そのピンク頭を紹介してほしい。どこの誰だ。
わたしは仕方なくチェスターの対面のソファに腰を下ろした。
「御用件は?」
「待て。茶が運ばれてきてからだ」
挨拶はしないくせにお茶は待つらしい。よくわからない王太子だ。
「殿下ぁ、わたし、甘いお菓子が食べたいですぅ」
「そうか、わかった」
チェスターがローテーブルの上に置いてあったメイドを呼ぶベルを鳴らすと、ややあってから先ほどとは違うメイドがやってきて、チェスターを見てギョッとした。
「で、殿下!」
「遅い!」
「も、申し訳ございません……!」
まさか王太子がいると思わなかったのだろう。メイドは青ざめて頭を下げた。
「まあいい。先ほど違うメイドに茶を頼んだのだが、エイダが甘いお菓子が食べたいと言っている。ケーキか何かも持ってこい」
エイダ。なるほど、ピンク頭はそういう名前らしい。
……って、ああ。聞き覚えがあるわ。エイダ・アストン伯爵令嬢ね。
ウィーデル国でも中の下くらいに位置している伯爵家だ。妃教育で聞いた。
つまり、あまり重要な家ではないので、頭の隅に追いやられていたのだろう。
人間の記憶にも限界があるので、さすがに全員の貴族の顔と名前を覚えようとすれば頭がパンクする。特にわたしは公務がなければ部屋から出ないのだ。会う機会も少ないのだから記憶の定着にも時間がかかるというもの。ようは、優先順位が大切だ。アストン伯爵家はその優先順位が下だった。それだけだ。