ひとつだけ違う朝〜誘拐犯の娘として虐げられた私が、本物の家族を取り戻すまで〜
私が両親を『お父さん』『お母さん』と呼んだことに翔樹が気づいた。
だけどそれ自体を"当たり前"にしたい私の気持ちも、察したのだと思う。
「渚央を傷つけた俺らが言うことじゃないけどさ、過去のことより、これからどうするかを考えないと! ――なんだよ?」
翔樹は熱弁を振るった後で、横にいた陸の冷ややかな視線に気づいた。
目を細めた翔樹に陸の口が開く。
「……別に。ただ、なんていうか」
そして私をちらっと見た。
「!」
その饒舌な眼差しに、翔樹の頬に羞恥が浮かび――急に叫ぶように声を上げた。
「渚央っ! ほらな、俺とおまえ、そっくりじゃん!」
「え?」
急に火の粉が飛んできた。
「渚央も"図々しい"って言われるもんな。俺もよく言われる!」
「……」
父と母が顔を見合わせて、頷いていいのか困ったような表情になった。
そしたら翔樹は母も巻き込んだ。
「まだ渚央は知らないと思うけど、おまえの単純で無駄に打たれ強いとこ、母さんにそっくりだから」
「!」
「あと負けず嫌いだろ、そこは兄ちゃんに似てる!」
ここにはいない大樹のことも持ち出した。
「あはは」
私は笑った。
「まったくもう……」
いつものことなのか、母が呆れ顔で叱っている。
だけど父がまた流れを戻した。
「翔樹……、父さんとは、――どこだ?」
その質問が何に掛かっているのかに気づき、私の頬が勝手に熱くなった。
翔樹は鼻を鳴らして言った。
「教えてやらない」
「……」
父の情けない顔が、また笑いを誘った。
「騒がしくてすみません」
母が周囲に頭を下げている。
少し離れたところにいる陸の両親も笑っていて、陸だけ、何が面白いんだ、という顔をしていて、そこがまた可笑しかった。
こんな風に笑えたのはいつぶりなんだろう――思い出そうとしても辿り着けない。
いいなあ、こういうの。
噛みしめていると、翔樹が「家に帰ろう」と言った。