ひとつだけ違う朝〜誘拐犯の娘として虐げられた私が、本物の家族を取り戻すまで〜

エンドロールのような一日(最終話)



 ――「陸、行こう!」
 私は勢いをつけて椅子から立ちあがった。


 陸が無意識に袴の裾を直し始めた。
 私もつられてお揃いの白上着を整える。
 控えの部屋から旅館の廊下へ出た。
 ガラス窓の外に広がるのは冬景色。
 ナンテンの実も雪化粧をしている。 
 スピーカーから流れてくるのは繊細な琴の音。私の高鳴る心臓の音と噛み合ってない。
 
「緊張してきた」
 歩きながら陸が漏らした。
「私もだよ」と答える。
 だけど――
 「楽しみだ」と口にしたら、合わせたわけじゃないのに声が重なった。
 

 蓮見旅館では新春の催しが開かれている。
 毎年の恒例行事だ。
 昨日はロビーでつきたての餅や樽酒が振る舞われ、夜には獅子舞や和太鼓の演奏があった。今日は終日、大広間で縁日風のイベントが開催される。そこで私と陸は書初めを披露することになった。
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