ひとつだけ違う朝〜誘拐犯の娘として虐げられた私が、本物の家族を取り戻すまで〜
「小峰君、これはっ違うの、誤解なのっ」
「誤解って、あんたの声ドアの外にも聞こえてたけど?」
いろはの顔は真っ赤だった。
「ほら、立って」
差し伸べられた手を見上げた。
――小峰陸。
去年のクラスメイトだ。王子系男子のうちのひとりでクーデレ枠と言われているけれど、『デレ』なところは誰も見たいことがない。そもそも小峰くんは男子としか喋らない。
「……」
私はその手を掴まず自分で立ち上がった。
するといろはの子分のひとりが急に喋り出した。この子はいつもいろはにべったりくっついている、いろはの忠実な信者だ。
「小峰君、山都さんをかばうのおかしいよっ、この子がどういう子か知ってるでしょ? この子の母親、いろはちゃんの弟さらって逃げてるんだよっ」
「興味ない」
小峰君は言い切った。そして続けた。
「どっちにしても渚央に関係ないし」
「!」
唐突に小峰君が私を呼び捨てにした。……ちょっと待って、今日までこの人と喋った記憶がないんだけど?
見ると、いろはも子分たちも動揺していた。
「渚央、行くよ」
そして勝手に私の腕を掴んで歩き出した。むき出しの腕に小峰君の手のひらの熱が伝わってきた。私は引っ張られるまま、速足でその場を離れた。