ひとつだけ違う朝〜誘拐犯の娘として虐げられた私が、本物の家族を取り戻すまで〜
 
 ――母の失踪後、私はしばらく沖縄で暮らした。

 伯母が迎えに来てくれて、
 沖縄で一緒に暮らそうと言ってくれた時、
 ……ついて行っていいの?
 ……いつか、『母の娘じゃない』と知っていたことがバレてしまったら?
 と、恐怖と罪悪感でパニックになっていた。
 
 結局は、ただ流れに身を任せることしかできなかったが、これから自分がどうなってしまうのか、どうすればいいのか、そして私は『誰』なのか――
 考えなければいけないことが多すぎて、逆に『何も考えない』ことでなんとか生きていた……ように思う。

 
 伯母の家には中学生の男の子がいた。
 初めは、声が出ない私に同情して親切にしてくれるだけだと思っていた。
 でもその距離感はどんどん近くなっていった。
 沖縄で暮らして二年目に入った頃だった。
 身体に手を置かれる回数や範囲が増えていった。
 私はふたりきりにならないように気を張って月日を過ごした。だけどある夜、一線を越えてきた。
 気持ち悪くて、必死にもがいた。

 私は無我夢中で声をあげた。いつもなにかが張り付いていたように感じられた喉で。
 沈黙の膜を突き破った――そんな感覚だった。皮肉にも、それが私の失語症が治ったきっかけだった。
 部屋に飛び込んできた伯母はすべてを見たはずなのに、私を叱った。
 脱がされたパジャマも私の涙もすべて無視された。

 そうして私は、元の家に戻ってきた。
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