ひとつだけ違う朝〜誘拐犯の娘として虐げられた私が、本物の家族を取り戻すまで〜
両親は晴樹が戻ってきて心から喜んでいる。
だけど私のことがあって辛そう。
大樹は思い悩んでいる様子だ。
いろはは部屋に入ったきり一歩も出てこない。
「……」
それを聞いて、なんて言ったらいいか分からなくなった。
特にいろはのことは複雑な気持ちになった。
「私のこと、バレない方がよかったかな」
心の声が漏れてしまった。
翔樹の表情が歪んだ。
その一瞬の顔に慰められた。
「だって、私のことがなかったら晴樹が帰ってきて幸せ――で終われたよね」
言うつもりのなかった言葉まで飛び出した。甘えたくなったのかもしれない。
「そんなことない」
低く強い声だった。
翔樹の語尾には重力がかかっているみたいだった。
「そうかな?」
もっと深く探っていた。
「私が黙ってれば誰も傷つかなかったじゃん」
「本当の家族だって知らない方が不幸だ」
翔樹が断言した。
「……そっか、……ありがとう」
ようやく、本当の意味で満たされた。
弱音を受け止めて、現実だけをくれた翔樹に救われた。
「いつか翔樹とみたいに、みんなとも喋れるかな」
切なる願いだった。
翔樹は奥歯をぐっと噛んでから私を強く見た。
「俺が絶対そうさせるから心配するな」
「……」
ただただ心強かった。
――そうだ。私はもう頑張らなくていいんだ。
「……うん」
しっかり頷いた。