ひとつだけ違う朝〜誘拐犯の娘として虐げられた私が、本物の家族を取り戻すまで〜
 
   * 
  
「――渚央となんかあった? もしかして、叱った?」
 渚央と入れ違いに翔樹が帰ってきた。

「……叱るって、どうして?」
 私は驚いて聞いた。
「渚央、泣いてたから」
「泣いてた……? だって、ずっと笑って……」
 夫が弾かれたように立ち上がった。
 けれどリビングを出て行きかけて――また戻ってきた。
「渚央ちゃん、なんて?」
 葛藤してばかりの夫を隣に、動揺のまま翔樹に聞いた。
「『なんでもない』って走ってったから、とりあえずこっちの話し聞いてから、渚央のとこ行こうと思って」
 翔樹は荷物をソファに投げて、音を立てて座った。

「叱ったとかじゃないなら、なに?」
 私は聞かれるままに答えた。 
「……渚央ちゃんが、ここを出て行きたいって」
「はあ? なんで急にそんな話になんの?」
 翔樹の指摘にはっとする。

「あ、ええとね」
 転校のことから説明しなければと、順を追って話した。
 なんとか会話の内容を整理して口にすると、翔樹はみるみる失望した顔つきになった。
 
「もし本当に転校するんなら、渚央じゃなくていろはの方だよ?」
 翔樹の言葉が矢のように鋭く飛んできた。
「なんで渚央の方が追い出される側になるわけ?」 
 !
 追い出す? どうしてそんなことになるの?

「この場合、騒いでる方が転校するもんじゃないの?」
 ……待って、
 私は、渚央のことを考えて……、渚央も転校したいって……
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