冷静な天才外科医の弱点は、私でした
宗形先生は、驚くほど話が早かった。
こちらが提示した数字を理解し、現場の事情を説明する。
必要なものと、妥協できるものを即座に分ける。
そして何より、
ーー患者さんにとって、本当に必要か?
その一点だけは、最後まで曲げなかった。
私は少しずつわかってきた。
(この人は、ただ自分の理想を押し通したいわけじゃない)
救える命を一つでも増やしたくて、そのために必要なら自分の案すらあっさり変える。
「……先生」
「何ですか」
「思っていたより、ずっと柔軟なんですね」
寒々としていた周囲の空気が柔らかくなる。
咳払いをし、コーヒーに口をつける人もいた。
(まずい、失礼だったかも)
止まっていた冷や汗が背筋を伝う。
けれど、宗形先生は怒らなかった。
「そうですか?」
「……はい」
「褒めてます?」
「……たぶん」