冷静な天才外科医の弱点は、私でした



「事実なので」


 先生の口元が、また少しだけ緩む。

 その表情を見て、胸の奥が小さくざわついた。

 会議中は指先が震えるほど怖かったのに。

 こうして二人で話していると、思っていたほど近寄りがたい人ではない。

 むしろ、話をすればするほど、こちらの言葉をきちんと受け止めてくれる。


「それと」


 宗形先生が別のページを開いた。


「この部分ですが」

「はい」

「一か月半で第一段階を始めるなら、医療側はこの人員配置で問題ありません」

「本当ですか?」

「はい。外来の調整が必要ですが、こちらで動かします」

「助かります」

「ただその分、経営側にも動いてもらわないと困ります」

「……私ですか?」

「あなたです」


 あっけらかんと即答されて、思わず笑う。


「わかりました。やります」

「頼みます」


 短いやり取りで、それだけなのに不思議と嬉しかった。


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