冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 今日初めて話したばかりなのに。


「じゃあ、明日の午前中までに修正版を作ります」

「俺も確認します」

「先生、明日も忙しいでしょう?」

「時間は作ります」


 その言い方が妙に熱がこもっているような気がして、一瞬、言葉を失った。


「……わかりました」


 資料をまとめる。

 すると宗形先生が、ふと私の手元を見た。


「もう帰るんですか?」

「はい。千春にも帰るように言われましたし」

「千春?」

「田辺千春……同僚です。さっき一緒にいた」

「ああ」


 宗形先生が少しだけ頷いた。


「仲山さんのことをよく見ているんですね」

「そうなんです。私が無理するとすぐわかるんですよ」

「……そうですか」


 その声がほんの少しだけ低くなった気がしたけれど、私は気に留めなかった。

 鞄を持ち上げる。


「先生も帰りますよね?」

「はい」


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