冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 院内では、医師からも看護師からも一目置かれている。

 廊下ですれ違うだけで、密かにため息が漏れる。

 そんな先生。

 そして──私が今、真正面から否定した計画の中心人物でもある。

 心臓がすぐ耳元で鳴っているみたいにうるさくて、視線を上げられずに自分のネームプレートが目に入った。

 肩につくくらいのダークブラウンの髪。

 やや大きめの茶色がかかった瞳。

 人から「笑うと幼く見える」と言われる顔立ち。

 写真の横には「恵誠(けいせい)大学病院・経営企画部・仲山ひかる」と記されている。


「……理由は?」


 低く落ち着いた声が聞こえてきて、そっと視線を上げた。

 怒鳴られたわけではなく、むしろ静かだった。

 だからこそ、怖い。

 背筋に冷たいものがすっと走る。


「まず、設備費です」


 私はスクリーンを切り替えた。

 声が震えないよう、意識して息を整える。


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