冷静な天才外科医の弱点は、私でした
「最新型の手術設備を一度に導入することで、初期費用が病院の想定を大幅に超えています」
「必要な設備です」
即答で、声に揺らぎはない。
「はい。必要なのはわかっています」
「なら、問題ないのでは?」
「いいえ」
私は資料をめくった。
「同じ年度に、ほかの診療科でも設備更新が予定されています。この計画をそのまま通せば、他科の予算を圧迫します」
宗形先生の眉が、ほんの少し動いた。
その些細な動きひとつにさえ、舌が上顎に張りつきそうな自分がいやになる。
「しかし心臓病治療センターは、病院全体の医療水準を引き上げます」
「それも理解しています。ですが、それだけでは病院は運営できません」
会議室は物音一つ立たない。誰かの咳きも、ペンg走る音さえも。
隣に座る千春が、伏せていた目をほんの一瞬だけこちらに向けた。
『大丈夫?』