冷静な天才外科医の弱点は、私でした
ある日のオンライン会議では、海外の医療機関とドイツ語で話していた。
流暢で、ネイティブと勘違いしてしまうほどの澱みのなさ。
私が感心している間に、スラスラと専門用語を交えながら、相手の質問にも迷いなく答えていく。
会議が終わったあと、
「先生、ドイツ語も堪能なんですね」
私がそう言うと、彼は少し考えるような顔をした。
「必要なので」
「必要だからって、あそこまで話せるものですか?」
「勉強すればできます」
「……そういうものですか」
この人は、できることを特別なことだと思っていないらしい。
別の日には、スタッフ同士の意見がぶつかった。
新センターの立ち上げをめぐり、現場の負担が増えることへの不満が出たのだ。
普通なら、責任者が押し切る場面だった。
けれど宗形先生は違った。
「何が一番困る?」
まずは落ち着かせ、一人ずつ聞いていく。