冷静な天才外科医の弱点は、私でした
それからしばらくして、私は小さな違和感を覚えるようになった。
宗形先生が、私にだけ少し甘い。
最初は気のせいだと思った。
資料の確認を頼まれたときも、
「仲山さん、これをお願いします」
声が柔らかい。
同じ内容を他のスタッフに頼むときは、
「これ、今日中にお願いします」
と、かなり簡潔なのに。
私には、
「可能なら今日中に確認してもらえると助かります」
と言う。
……何だろう、この違い。
ある日の夜、私はまだ仕事をしていた。
キリがいいところで背伸びをして時計を見ると、二十時を過ぎている。
すると、後ろから声がした。
「まだ仕事ですか?」
驚いて振り返ると、宗形先生だった。
「先生もですよね」
「俺はいい」
「私は?」
「君は駄目」
思わず笑ってしまった。
「何ですか、それ」
「もう遅いですから」