冷静な天才外科医の弱点は、私でした



「先生も遅いですよ」

「俺は仕事がありますから」

「私にもあります」

「でも、君は帰れるでしょう?」

「先生も帰れます」

「……」


 宗形先生が目を泳がせたから、私は笑った。


「先生、自分には甘いですね」

「君に言われたくない」

「どうして?」

「君も十分、自分に甘くないから」

「……」


 言い返せなかった。

 どうやらお互い様らしい。


「ほら」


 宗形先生が私のデスクに置いていた資料をまとめる。


「今日は終わり」

「先生、せめてもう少しキリのいいところまで」

「急ぎですか?」

「……明日の朝でも間に合います」

「なら、なおさら帰るべきでしょう」

「……わかりました」


 仕方なく立ち上がる。

 そのときだった。


「仲山さん」

「はい?」

「これ」


 宗形先生が何かを差し出した。

 自販機で買ったらしい飲み物。


< 29 / 79 >

この作品をシェア

pagetop