冷静な天才外科医の弱点は、私でした
翌朝、私はそのことを千春に話した。
もちろん、最後の一言については話せなかった。
「宗形先生が弱音を吐いた?」
「うん」
「へえ」
千春が目を丸くする。
「それ、結構すごいんじゃない?」
「そうなのかな」
「だって、あの宗形先生でしょ?」
「……うん」
「その宗形先生が、ひかるには疲れたって言ったんでしょ?」
「そうだけど」
千春がじっと私を見る。少し垂れた目には真剣な光が宿っていた。
「それ、信頼されてるんじゃない?」
「……仕事仲間としてね」
「はいはい」
千春は意味ありげに笑った。
「何?」
「別に?」
「その顔やめて」
「だって、ひかるがちょっと嬉しそうだから」
私は自分の顔にそっと触れる。
ーー嬉しかった、か。
確かに、宗形先生が自分にだけ弱いところを見せてくれたことが、それが少しだけ嬉しかった。