冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 その数日後、私は病院の上層部との交渉で、完全に行き詰まっていた。

 心臓病治療センターの第二段階に必要な予算は、現場としては必要不可欠。

 けれど、経営側からすると簡単には認められない金額だった。


「仲山さん、これ以上の増額は難しい」

「ですが、この人員数では――」

「宗形先生の意見はわかっています」

「では、せめて――」

「これ以上は検討できません」


 会議室を出た私は、深く息を吐いた。

 悔しいーーだけど、わかっている。

 相手の言っていることも正しい。

 だからってここで諦めれば、現場にしわ寄せがいく。


(もう一度、やってみるか……)


 私は一人で資料を作り直すことにした。

 夜遅くまで残り、数字を洗い直し、別の補助金制度を調べ、人件費の試算を組み直す。

 何とか突破口を作ろうとした。


「また残業ですか?」


 この前のように、後ろから声をかけられた。


< 36 / 79 >

この作品をシェア

pagetop