冷静な天才外科医の弱点は、私でした
本当にそれだけ
その夜、私は忘れ物を取りに病院へ戻った。
廊下の照明は、ところどころ落とされている。
もうほとんどの職員は帰っている時間だった。
そのとき、医局の一室から明かりが漏れているのに気づいた。
こんな時間に誰かいる。
気になって扉の隙間から中を見た。
「……先生?」
宗形先生だった。
デスクの上には、何冊もの医学書に海外の論文、過去の症例記録や手術映像のデータ。
パソコンには、いくつもの論文が表示されている。
私は驚いた。
「まだ仕事してたんですか?」
宗形先生が顔を上げる。
「仲山さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です……何してるんです?」
「勉強です」
「……勉強?」
「はい」
私は思わず笑った。
「先生でも勉強するんですね」
「しますよ」
「でも、先生って天才じゃないですか」
その言葉に、宗形先生の手が止まった。