冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 それから数日、私は妙に宗形先生を意識するようになっていた。

 理由はわからない。

 ただ、以前なら何とも思わなかったことが気になる。

 例えば、会議室で資料を渡すとき、指先が触れただけで意識してしまう。


「……どうしました?」

「え?」

「ぼんやりしています」

「何でもありません」


 そんなことが増えた。

 そしてある朝のこと。


「仲山さん」

「はい?」

「髪型、変えました?」


 資料をめくる指が止まった。


「……わかるんですか?」

「はい」

「少しだけですけど」

「似合ってます」


 まるで、何でもないことのようにさらりと言われた。

 ヘアアイロンで少しいじってみただけなのに、気づいてくれたの?


「……ありがとうございます」


 ようやくそれだけ答える。

 宗形先生はもう資料を見ていて、私は自分の顔が熱くなるのを感じた。


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