冷静な天才外科医の弱点は、私でした
その言葉に、はっきりと熱が混じった。
私は息を止める。
低い声なのに、会議室全体に響くような気がした。
出席者たちも顔を見合わせている。
「……わかっています」
「なら、なぜ止めるんですか」
初めて、彼が感情を見せたのだろうか。
私は資料を握り直した。
「止めたいわけではありません。続けられる形にしたいんです」
目蓋の裏に、昔の記憶がよみがえる。
以前、別の病院で働いていた頃。
救急部門の設備更新をめぐって、大きな議論になった。
現場からは、「今すぐ必要だ」と主張された。
この設備があれば救える患者がいる。
患者の命のために必要なのだから、予算をつけるべきだ。
当時の私はその言葉に頷いた。
患者さんを救いたいーーその気持ちを否定できなかった。
結果、設備更新は承認され現場は喜んだ。
私も役に立てたと思った。