冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 そして、通算何度目かの会議後。

 高瀬先生に声をかけられた。


「仲山さん、今日も帰り遅い?」

「たぶん」

「じゃあ、飯――」

「仲山さん」


 気づけば、背後にいた宗形先生が口を挟んでいた。

 二人で振り返る。


「はい?」

「今日の資料ですが、少し質問いいですか?」

「今ですか?」

「はい」

「わかりました」


 私は高瀬先生に向き直った。


「すみません。また今度」

「うん。じゃあ、また連絡する」


 高瀬先生が去っていくのを横目に、私は宗形先生に小声で話しかけた。


「先生」

「はい」

「資料の話じゃないですよね?」

「……」

「もしかして」


 私は唇を湿らせた。


「私たちの邪魔しました?」

「そんなことは」


 宗形先生は即答したけれど、その目が揺らいでいるのを私は見逃さなかった。

 ……存外、わかりやすい人なのかもしれない。



< 51 / 79 >

この作品をシェア

pagetop