冷静な天才外科医の弱点は、私でした
例えば別の日の午後。
昼食を取る時間がなくて、昼を抜いたまま病院内を駆け回っていた。
企画部のデスクに戻ると、いつの間にか紅茶とサンドイッチが置かれていた。
私がいつも買っているもの。
顔を上げて窓のほうを見ると、宗形先生が廊下の向こうにいる。
宗形先生はほんの一瞬だけ私を見た。
それから、何も言わずに目を逸らす。
胸がどくんと鳴って、せっかく買ってくれたのに紅茶とサンドイッチの味が全くわからなかった。
嬉しい。
素直にそう思った。
でも、嬉しくなるほど怖くなる。
この優しさが、いつか消えてしまったら。
そのとき私は、きっと傷つく。
「ねぇ、ひかる」
その日の帰り道、千春が言った。
「好きなんでしょ?」
「……うん」
もう否定できなかった。
「でも」
「うん」
「私じゃなくてもいいんじゃないかな」