冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 千春が眉を寄せる。


「先生がそう言った?」

「言ってない」

「じゃあ、どうして?」


 私は答えられなかった。

 だって宗形先生は、私よりずっと遠い場所にいる人に見えるから。

 私はただの経営企画部の職員。

 宗形先生は、国内でもトップクラスの心臓血管外科医。

 住んでいる世界が違う。

 そう思ってしまう。

 そう思う、じゃおかしいな。

 厳然たる事実だ。

 もし私がもっと美人で、宗形先生と同じように医者で、家事も完璧な女性だったら。

 きっと気後れせず隣に並べるだろう。


『宗形先生、やっぱり判断が迅速で的確だな』

『この間、難しい症例も任されてたよね』

『身だしなみチェックでも一度も引っかかったことないって話だよ』

『それが家事もできるんだって。石川先生から聞いた』

『いよいよ超人じゃん』


 いつかの噂話がよみがえり、目を伏せて緩く首を振った。



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