冷静な天才外科医の弱点は、私でした
「院長室でも話が出てたから、センターの計画にも関係してくるかもしれないね」
そう言って仕事へ戻っていく。
私は資料を持ったまま動けなかった。
その日の午後。
院長秘書の森さんから、会議資料を受け取った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
森さんは私の顔をまじまじと見る。
「どうしたの?」
「え?」
「なんかぼーっとしてる」
「……何でもないです」
「そう?」
森さんはそれ以上聞かなかった。
ただ帰り際に、
「そういえば、宗形先生の件もう聞いた?」
と佐々木主任と同じ話題を口にした。
「……海外招聘のことですか?」
「そう」
私は天気の話でもするように「聞きました」と返した。
「はい。佐々木主任から」
「ならよかった」
その一言に、胸が少し痛んだ。
まるで、私が知っているのが当然のように聞こえたから。