冷静な天才外科医の弱点は、私でした
今度は夕方。
センター準備室の高橋さんとすれ違った。
「仲山さん」
「はい?」
「明日の会議、宗形先生も出るから資料少し早めにお願いします」
「わかりました」
高橋さんが何気なく続ける。
「先生が海外に行くことになったら、スケジュール大変そうだな」
「……やっぱり」
「いや、まだ決まってないよ。でも、向こうからかなり良い話が来てるらしいからね」
「そうなんですね」
「まぁ宗形先生なら、向こうでも絶対上手くやれるよ」
高橋さんはそのまま歩いていき、私はその場に残った。
誰も悪くない。みんな普通に仕事をしているだけだ。
でも気づいてしまった。
私は宗形先生のことを何も知らない。なのに、みんな宗形先生の未来について知っている。
なのに私は噂として聞いて知った。
本人からではなく、仕事の途中で。
人から人へ伝わってきた情報として。